雨の予報が当たって、出かける用事がぜんぶ流れた。そういう午後が、年に何度かあります。
がっかりするより先に、少しほっとしている自分がいる。今日はもう、何もしなくていい。そう決まった瞬間の、あの軽さ。
そんな日は、音楽を一枚だけ選びます。テレビでもニュースでもなく、ただ、聴くためだけの音を。雨の音の上に、もう一つだけ音を重ねる。それくらいが、ちょうどいい。
雨の午後に、そっと連れていきたい六曲を。
ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
男の人と女の人の声が、寄り添うでもなく、ただ並んでいる。生活の中で口ずさむような、肩の力の抜けた歌。聴いていると、うまくいかない日も、まあいいか、と思えてくる。
ハナレグミ feat. 忌野清志郎「サヨナラCOLOR」
二人の声が溶けあう、やさしいデュエット。別れの歌のはずなのに、なぜか温かい。手放すことは冷たいことじゃないと、声の重なりが教えてくれる。
カネコアヤノ「燦々」
まっすぐで、飾らない声。気持ちのいい日のことを、気持ちのいいまま歌っている。聴いていると、自分の「好き」を、もっと素直に言っていい気がしてくる。
優河「めぐる」
低くて深い、湯気みたいな声。急がず、ゆっくりと巡っていく。何度も同じところに戻ってくる日々も、悪くないと思わせてくれる。
高木正勝「Girls」
ピアノと、声にならないような声と、雨の気配。言葉が少ないぶん、こちらの心の余白に、すっと入ってくる。雨の音とのいちばんの相棒かもしれません。
くるり「奇跡」
静かに始まって、静かに沁みていく一曲。特別な日のための歌じゃなく、何でもない日に、ふと隣にいてくれる。そういう曲が、結局いちばん長く聴いていられる。
六曲を続けて聴くころには、雨の音も、ひとつの楽器みたいに聞こえてきます。
たくさんの曲を流しっぱなしにして、午後を埋めることもできた。でも今日は、この六曲がいい。「何でもいい」じゃなく「これがいい」と選ぶ。それだけで、流れていくだけの午後が、自分の午後になる。
聴きたい音を、聴きたいときに、聴く。それはたぶん、自分の感覚に正直でいる、ということの、いちばん小さな形です。
雨の日の予定が流れたら、どうかがっかりしないで。その午後は、あなたが自分のために聴くための、贈りものかもしれないから。
あなたの雨の午後には、どんな一曲が、似合うでしょう。

耳をすませる午後のそばに、Ears and eyes の一台を。大きな耳のうさぎが、音のするほうを、じっと見ている。→ このケースを見る