MAL. people | No.02 | インタビュー
あとから好きになった、赤サビ色
― mozuさんのお家
「自分の姿って、生活しているとそんなに見えないけど、家の中は絶対に目に入るから、自分の好きなバランスで整えておきたいんです」
冷蔵庫に貼る小さな作品から、毎日使う家具まで。いまでは家に置くものを自分の手でつくるmozuさんだが、話を聞くと、この家に住むまで、DIYをしたことは一度もなかったという。

聞き手・文 MAL. 写真 mozu 取材 2026年9月
mozuさん
昨年建てた家で、夫と子ども二人と暮らす。間取りから造作まで、ほとんどを自分で決めた家だ。住み始めてから、家に置くものを自分でつくるようになり、その様子をInstagramで発信している。100円ショップの粘土でつくった、冷蔵庫に貼る、ランプのような作品は、日本だけでなく海外にも広がった。ふだんは、中古品を扱う仕事をしている。
Instagram: @mozu_house8
01DIYは、この家に住んでから
―― 家具や小物を自分で作ったり、家に手を加えたりするようになったのは、いつ頃からですか。
「この家に住んで、一年も経たないうちです。ここに収納があったらよかったな、この色じゃなければよかったな、というところが色々出てきて。そこから、自分で手を入れはじめました」
―― それまでに、DIYのようなことをした経験はあったんですか。
「まったくなかったです。前に住んでいた家でも、何もしていませんでした。素人なりにやってみたら、自分でもできるんだな、と思えて」
―― まったくなかったんですね。では、ものを作ること自体は、昔から好きだったんですか。
「作ったり、絵を描いたりするのは好きでした。でも、売っていないから自分で作っちゃおう、というふうに考えたことはなかったですね」
―― 家のことを考えるようになったのも、この家を建てる前からだったんですか。
「いえ、建てるときに、急にです」
つくることも、絵を描くことも、もともと好きだった。それが家のほうへ向いたのは、自分で決めた家を建ててからだという。思っていたより最近のことで、少し驚いた。

02家を建てる人に向けて始めた、Instagram
―― Instagramを始めたのは、どんなきっかけだったんですか。
「家を建てるとき、インスタをすごく参考にしたんです。だから私も、これから家を建てる人の参考になればと思って、家のことを発信しはじめました」
「でも、それはあまり向いていなかったみたいで。やっていても、楽しくなかったんです。作っているほうが楽しくて、だんだんそっちに寄っていきました。反応をもらえるようになってきたのも、うれしくて」
―― 作ることの、どんなところに惹かれていったんですか。
「作るのももちろん好きなんですけど、編集が楽しかったんです。自分で撮って、ここでカットを入れて、何秒くらいにしよう、と考えながら仕上げていく作業そのものが面白くて」
―― 動画の編集も、それまでにやったことはあったんですか。
「それも、全然やったことなかったです」
―― 最初に考えていた目的とは、ずいぶん違う形になったんですね。
「当初の目的とは、全然違う形になっていますね」
03つくる前から、頭の中にある完成図
―― 作りたいものは、どんなふうに思いつくんですか。
「SNSや、いろいろな写真を見ていて、これをこういうふうに自分で作ってみよう、とパッと浮かびます。浮かんだときには、もう形が頭の中で決まっているんです。完成図が浮かんでいるものが、頭の中にたくさんストックされている感じです」
「仕事中も、次はあれを作ろうかな、と考えています。忘れないように、iPhoneのメモにたくさん残しています」
―― 作っている途中で、形が変わっていくことはないんですか。
「それは全然ないです。頭の中の形に、どれだけ寄せられるか、という感じです」
―― 作品に粘土を使うことが多いのも、そのためですか。
「単純に、やってみたらできた、というのが最初です。それに粘土は、固まってからも少し削って調整できるんです。木で椅子を作ったら、失敗しても、あとからどうにもできないことが多いと思うんですけど、粘土なら、足りなければくっつけて、多ければ取ればいい。頭の中の形に近づけやすいんです」


―― ほかの人の作品を見て作るときも、そのままは作らないんですか。
「見た瞬間に、私だったらこうしよう、とパッと思いつくんです。そのまま真似するより、自分なりに解釈し直して作るほうが、やりがいがあって。自分の一工夫を入れると、愛着も湧きます」
―― それだけ思いつくなら、作ろうと思えば、いくらでも作れそうですね。
「いらないものを作ろうと思えば、いくらでも作れます。でも基本は、本当に使っているもの、私が本当に飾りたいものだけを作っています」
04家に置くのは、ちょっとだけ
―― 家に置くものは、すべて自分で作っているんですか。買うこともありますか。
「半々くらいです。自分では作れないものや、デザインがすごく気に入ったものは買います」
―― 最近買ったもので、気に入っているものはありますか。
(と聞くと、二階から、IKEAの赤いバスケット「リーサトルプ」を持ってきた)
「ずっと白が人気だったんですけど、最近この色を見つけて。この色が好きなので、すぐ買っちゃいました」
―― 投稿でよく「赤サビ色」と書いている色ですね。昔から好きな色だったんですか。
「どちらかというと、いろいろな家の写真を見ているうちに好きになりました。海外の家だと、赤がバンって、ちょっとだけ入っているデザインが多いんです。それを見ていて、あ、これが好きなんだ、と気づいた感じです。それまでは、特に好きな色はなかったですね」

―― それまでは、好きな色も特になかった。服やアクセサリーなど、身につけるものも、同じように選んでいますか。
「身につけるものには、そんなにこだわりはないですね。生活していて、鏡で自分の顔を見ながら過ごす人って、いないじゃないですか。でも家の中は、この空間に自分がいるので、そっちのほうが気になってしまうんです」
―― 好きだと思っても、家には置かないものはありますか。置くかどうかは、どう決めているんでしょう。
「その物自体より、この家に置いたときにどうかを、すごく考えます。いろいろ置いたときに、引き算するほうが好きなんです。壁にも何も飾っていなくて、やりすぎ感が出ないものを、ちょっとだけ置くようにしています」
―― そういう感覚は、どこで身についたものなんでしょう。
「分からないです。ただ単に、好みの問題だと思います。映画だと『時計じかけのオレンジ』のような世界が好きで、スペースエイジやミッドセンチュリーっぽい感じにしたいとは思っているんです。でも今のところ、スペースエイジ感は全然ないです」
好きな映画の世界は、まだこの家に来ていない。赤サビ色のほうが、先に来た。
05100円ショップの材料と、子どもが帰るまでの時間
―― 家に手を加えることについて、ご家族から何か言われたりはしませんか。
「作ったものがどんどん増えていっているんですけど、夫は『またやってるんだ』くらいで、あまり関心はなさそうです」
―― 「またやってるんだ」くらい、ですか。材料費がかさんで、何か言われることもないんですか。
「高いものは使っていなくて、ほとんど100均でそろうもので作っています。すごく高い家具を買ったら、さすがに言われると思うんですけど、お小遣いの範囲で勝手にやっていることなので、あまり言われないですね」
―― 作業は、一日のうちのどんな時間にしているんですか。
「休みの日は、ほぼ全部です。子どもを送り出してから、撮影や編集をして。二時過ぎには帰ってくるので、帰ってきたら、そこでやめます」

06手放せないもの:ガラスブロックのテーブル
―― 家の中で、これだけは手放せない、というものを一つ挙げるとしたら、何ですか。
「ガラスブロックのテーブルです」
―― そのテーブルを選んだ理由を教えてください。
「家具を作るようなDIYは、本当にしたことがなかったんです。作りたいと思ったとき、本当にできるのか、作っても使えるのか、けっこう不安でした。でも作ってみたら作れたし、ずっと使っているんです。あのソファの横で」
―― 作ったのは、DIYを始めてすぐの頃ですか。
「家のDIYがだいたい落ち着いてから作りました。感動がありました。あ、私、作れるんだって」
「こうやって作るんだ、というコツはつかんだんです。でも、もう一回作ってと言われても、同じものは作れないかもしれない。だから気に入っているし、手放せないですね」

07次は、はじめてのタイルでつくるテーブル
―― いま、いちばん作りたいものは何ですか。
「寝室のベッドサイドに、タイルのテーブルを置きたいんです。寝室は、子どもと別々に寝るようになって、最近やっと使えるようになった部屋で。材料はもう買ってあって、すぐに作れる状態です」
―― 材料は、もう買ってあるんですね。タイルも、使ったことはあるんですか。
「全然やったことないです。うまくできるか分からないんですけど、やってみようかなって」
―― やったことのないことをしてみるのは、面白いですか。
「面白いですね。いろんな発見があって、楽しいです」
ソファの横には、ガラスブロックのテーブル。次は寝室に、タイルのテーブル。
材料のほとんどは100円ショップでそろうもので、お小遣いの範囲で。毎日目に入る景色を、自分の手でつくっていく。それは、贅沢なことなのかもしれない。
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